【明石市の専門医が解説】大腸がんリスクを低下させるには大腸カメラ。でも大腸カメラは痛い?鎮静剤(麻酔)を使用した当院の無痛大腸カメラについて
掲載日:2025.09.18(最終更新日:2025.09.18)
皆様、こんにちは。
明石市で患者さんのお腹を中心に日々診療している消化器内科医の松本次弘です。今回のテーマは大腸カメラです。
「大腸カメラ」と聞くだけで、「痛そう…」「苦しそう…」と感じる方も多いでしょう。また、以前大腸カメラを受けられて、苦しかった経験がある方もいらっしゃるかも知れません。しかし、現在は鎮静剤(麻酔)を使った「無痛検査」が一般的になりつつあります。
ここでは皆さんの持つ大腸カメラ検査への不安を踏まえて、なぜ検査が必要なのか、そして「痛痛」検査がどのように行われるのかを解説しましょう。
1.40才を過ぎたら一度は大腸カメラが必要な理由
2.大腸カメラの痛み・苦しさの原因と対策
3.眠っている間に終わる!鎮静剤(麻酔)を使った「無痛検査」
4.大腸カメラ検査の準備:食事と下剤について
5.検査当日の流れと所要時間
6.検査後の注意点と大腸カメラ後の食事について
7.まとめ:大切な命・家族を守るために
1.40才を過ぎたら一度は大腸カメラが必要な理由
大腸カメラ検査の最大の目的は、「大腸がんの予防と早期発見」です。日本では、大腸がんは未だに年々増加傾向にあるのです。最新のデータでは女性のがん死亡原因の第1位、男性でも第3位であり、日本人は決して大腸がんを克服できていないと言えます。
他のがんとの死亡者数の比較(2023年)[1]
●肺がん:約7万6千人
●大腸がん:約5万3千人
●膵がん:約4万0千人
●胃がん:約3万9千人
●肝がん:約2万3千人
先進国の中でも、日本の大腸がん死亡率は決して低くありません。
韓国、ハンガリー、チェコに次いで世界第4位の高い死亡率となっており、欧米諸国と比較しても深刻な状況です。
どうして日本では大腸がんによる死亡率が増え続けているのでしょうか?
答えは「大腸がん検診受診率の低さ」です。
日本の大腸がん検診受診率は約45%と、先進国の中でも低い水準にあります。特に働き盛りの40-50代男性の受診率は30%程度と極めて低く、早期発見の機会を逸している現状があります。
一般的な大腸がん検診で行われる便潜血検査は、約20-30%のがんを見逃す可能性があります。また、陽性になっても精密検査を受けない方が約30%もおり、早期発見の機会を失っています。
大腸カメラが大腸がんリスクを下げる理由
大腸がんは初期の段階では自覚症状がほとんどなく、症状が出てからでは進行しているケースが多いため、「予防・早期発見・早期治療」が命を守る鍵となります。
進行した(他臓器に転移した)大腸がんの治療成績は最新の医療をもってしても決して良くはありません。大腸カメラは「予防・早期発見・早期治療」においてベストな手段となるのです。
●大腸ポリープの発見と切除
多くの大腸がんは、良性のポリープが時間をかけて癌化することで発生します。大腸カメラ検査中にポリープが見つかった場合、その場で切除することが可能であり、癌化する前に取り除くことで大腸がんの発生を予防できます。
●早期発見と早期治療
大腸カメラは高精度で大腸の粘膜を直接観察できるため、自覚症状のない非常に早期の段階で大腸がんを発見することができます。早期に発見されれば、より身体への負担の少ない内視鏡手術で根治する可能性が高まります。
以上の理由より、大腸がんの有病率が上がる40才を過ぎたら一度は大腸カメラを受けましょう。
2.大腸カメラの痛み・苦しさの原因と対策
「大腸カメラが痛い」というイメージの原因は、大腸の曲がりくねった形状や、検査中に注入する空気によるお腹の張りなどが挙げられます 。しかし、当院では、大腸を伸ばさずに挿入する「軸保持短縮法」という技術や、鎮静剤(麻酔)の使用、炭酸ガスの送気など、痛みを最小限に抑える工夫を凝らしています。
適切な投薬と熟練した医師の技術があれば、安心して検査を受けることができるのです。当院では経験豊富な医師が、それぞれ責任を持って検査に当たっています。
3.眠っている間に終わる!鎮静剤(麻酔)を使った「無痛検査」
鎮静剤(麻酔)を使った検査は、ウトウトと眠っているような「うたた寝」に近い状態で検査を受けることができます。これにより、「検査中の痛みや不快感をほとんど感じることなく、気づいたら検査が終わっていた。」という感覚で受けていただけます。
鎮静剤には、痛みの軽減、不安の軽減、検査中の記憶が残らない健忘効果などがあり、安全性も確立されています。ただし、検査後の回復時間が必要なことや、当日の車の運転ができないなどの注意点もあります。
4.大腸カメラ検査の準備:食事と下剤について
検査の精度を高めるためには、事前の準備が非常に重要です。特に大腸カメラ前日の食事は、消化の良いもの(脂肪分の少ないやわらかいもの)を摂ることが大切です。おかゆやうどん、豆腐などを中心に、食物繊維の多い野菜や脂肪分の多い肉類は避けましょう。
また、大腸カメラの下剤・腸洗浄液は、腸の中を完全にきれいにするために不可欠です。指示に従い、リラックスして服用しましょう。また、腸洗浄液が苦手な方もおられますので、種類や飲み方についても主治医に是非ご相談ください。
5.検査当日の流れと所要時間
検査当日は、来院後、検査着に着替え、希望者には鎮静剤を投与します。検査自体は20~30分程度ですが、鎮静剤を使用した場合は、検査後に1~2時間程度の回復時間が必要です。全体としては、2~3時間程度の時間をみておくと良いでしょう。検査後は、医師から結果説明があります。
6.検査後の注意点と大腸カメラ後の食事について
検査後は、お腹の張りや、鎮静剤による眠気が残ることがあります。食事は、おかゆやスープなど消化の良いものから少量ずつ始め、徐々に普段の食事に戻していきましょう。特に10mm以上の大きなポリープを切除した場合は、1~2日間は食事制限や運動制限が必要です。何か気になる症状があれば、すぐに当院にご連絡ください。(当院は24時間電話対応しています。)
7.まとめ:大切な命・家族を守るために
「大腸カメラが痛い」というイメージは過去のものになりつつあります。当院の大腸カメラは、熟練した医師の技術と鎮静剤の活用により、苦痛なく、眠っている間に終えることが可能です。
患者様毎にオーダーメイドの診療を心がけ、丁寧に対応しています。「40才を過ぎたら一度は大腸カメラ」。大腸がんの予防・早期発見のために、ぜひ明石市の内視鏡センター明石西で検査を受けてみてください。
引用文献
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国立がん研究センターがん情報サービス:『がん統計』